笠井 浩
経営者として。

春日部で働く経営者としての日々

儀式の凛とした空気と冬の風

ようやく気温が季節に追いついた11月の終わり。
冷たくなり始めた風を受けながら、
個人宅の上棟式を執り行いました。
今回は、個人宅ということもあって、あくまで略式。
神主がわりを私が努め、施主にも棟まで上がっていただいて、
棟梁と三人で執り行います。
 
棟に、半紙を麻縄で三カ所巻いて止め、
割り切れない数のお金(今回は333円)を
棟銭としてお供えします。
「割り切れない数」には、建物に対する神様のご加護が
無限に近く続きますように、という
願いが込められているそうです。
続いて、棟銭の上に
塩・米・酒の順番で撒いていき、
三カ所ともお清めを行います。
 
その後は、神主の代わりを務めている私が、
祝詞(のりと)を奏上します。
「上棟式祝詞」は決まった文言があり、
私も、もう幾度も読み上げているので、
それなりに厳かな雰囲気は漂っているかと……。
祝詞の終盤、
“打堅多留釘乃緩毘”
(うちかためたるくぎのゆるび=木組みが締め固まった様子を示す)
の文言の後で、木槌を三回、「コンコンコン」と鳴らします。
この木槌の音を聴くと、不思議なもので
気持ちまで締め固まる気がします。
 
「あ、建物の元となる“骨格”は出来たんだな」と。
 
個人宅の、神主不在の上棟式は、
本式のものとは少し意味が違うように思います。
「神様に、完成までに災いが起きないよう祈願する」というよりも、
工事関係者に気持ちよく仕事していただくための儀式であり、
施主に「いよいよ自分の城が出来上がりつつある」という
気持ちを持っていただくための、
どちらかというと、少しセンチメンタルなイベント。
 
そんな儀式=イベントに流れる凛とした空気は、
いつも心地よいものです。
 
 
 
上棟式は、棟木のてっぺんで行う。
本式の場合は、神主と棟梁が最初に棟まで上がり、棟梁の祈願の後、
施主や関係者が上がって祈願を行うが、今回は施主にも最初から棟まで上がっていただいた。